東京 八王子 印鑑文字工房 楽善堂の店長が印鑑や文字の魅力を語る
「ハンコ無用論」について大学の先生より
こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。
先日、北海道の大学の先生より印鑑リフォームのご注文を3本いただき、発送完了のメールのお返事に下記のメールをいただきました。掲載のご許可をいただいたので、ご紹介させていただきます。はんこ屋の店主としては誠にありがたいお客様です。先生はタイランドで5年を過ごされています。
ホームページとブログを拝見しました。
印鑑は誰でも使うものなのにほとんど知らないものなので、奥の深さに心打たれました。
また、職人かつ商人という姿勢もすばらしいと思います。さて、一つブログに対しリクエストがあります。
最近脱ハンコなる動きが急速に拡大しております。
私が務めている高専でもそういう文書が増えてきましたが、危うさを感じています。なぜなら、ハンコに慣れた日本人は、ハンコの添え物としてのサイン、記名にはそれほどの重きを置きません。
例えば○○○○(お客様のフルネーム)、と書いてあれば誰の字であるかまでは詮索しないという人が多いと思います。私はハンコがまったくないタイで5年間住んでいました。
現地では何でもパスポートコピー+同じ筆跡でのサインを常に求められ、受け取った人間もそれを入念に見ていました。筆跡を重視する習慣がない日本でハンコをただ廃止すれば、
この字はコピーではない、直筆だ、というだけで何でも通ってしまう気がしてなりません。
お時間のあるときにでもブログやホームページで書いて下されば!というリクエストでした。御社のますますの発展を祈願します。
このたびはありがとうございました。
タイランドでは、同じ筆跡のサインを常に求めらて、またそのサインを入念に見る、といお話、初めて知りました。そして筆跡を重視する習慣は日本には無いからハンコ廃止はよろしくない、というご指摘です。お客様からこのようなご意見をいただくと本当に勇気づけられます。
ハンコを扱っている店の店主としては「ハンコをひと束にして、不要だ、にして欲しくない。」と思います。個人の印鑑だけでも3種はあり、
実印⇒役所に登録をしておいて、印鑑証明を出してもらうのに必要
銀行印⇒銀行の新規口座開設時に必要
認印(仕事印)⇒ビジネスの書類、公的機関への申請書に必要
河野大臣が「ハンコ不要」と言ったのは3番目の認印(仕事印)だけのことです。仮に、実印、銀行印まで不要、とひと束にされては本当に困ります。
現在では、印鑑登録制度が残っているのは、世界の中で日本だけです。優れた証明手段としてのハンコ、さらに言えば日本の文化としてのハンコ、を今後も残していきたい、そう考えております。