東京 八王子 印鑑文字工房 楽善堂の店長が印鑑や文字の魅力を語る
印鑑の楽善堂 四代目店長 平澤 東のブログ

草書の印鑑

2023年06月12日

印鑑 八王子 楽善堂

──── 八王子で印鑑を作り続けて124年 ────

 こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。

 印鑑の書体の種類に草書(そうしょ)もあります。書道の領域に多いと思われがちですが、印鑑の書体にもあります。時折り、見本帳をご覧になったお客様が「では、草書で実印を作って下さい。」とご指示になることがあります。

 草書は篆書(てんしょ)と同じく、文字によっては全く判読できないことがあります。ご来店のお客様には、辞書から文字を見ていただき、だいたいのイメージをご確認いただきます。ネットからのご注文には、印稿(仕上がりのラフデザイン)を彫る前にメールで送信しています。

 三代目の父から聞いた話で、昭和の20年代、印鑑でなく瀬戸の表札で草書の指定をなさったお客様がありました。「下」の文字がはいるご苗字で「下」文字が全く判読できない文字で仕上がってきました。表札の筆耕職人は草書の「下」の文字を分かっていて発注の指示通りに書いてきました。当時、二代目の祖父も健在で二人で「これは納まるだろうか?」と心配していたところ、このお客様が見えて「よく仕上がりましたね。納得です。」と言ってさっとお持ち帰りになったそうです。

 表札の文字は誰にでも判読できる必要性から通常は、行楷書と言って楷書と行書の中間的な作風で書くことが多いです。一方で印鑑は、お客様の好みが分かれて「判読出来きた方がいい。」と言う方と「判読で出来ないように作って欲しい。」という方と分かれます。店頭の接客時には、印鑑の用途を伺い、仕事で使用する、という場合には判読できる書体をご提案して草書は、銀行印、実印の場合のみにご提案しています。

 草書の銀行印にご興味のある方は下記の当店ページをご参照下さいませ。
https://rakuzendo.com/item/sousyo-maru-g/

左下にある点が三個の文字は、草書の「下」です。右隣りも「下」ですが
かろうじて判読出来そうな文字になっています。活字の「右」は文字の出典で
中国の書家、王 羲之(おうぎし)、別名、王右軍(おうゆうぐん)の文字です。
『五體字類』よりコピーしました。
左下の「下」の文字は判読しやすい草書です。業界の組合で発刊している「常用漢字印章字林」よりのコピーです。

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