東京 八王子 印鑑文字工房 楽善堂の店長が印鑑や文字の魅力を語る
対応する楷書が違う篆書(てんしょ)
オーダーの印鑑に多く使われている書体は篆書(てんしょ)です。たいていの篆書の文字は、楷書に似た部分から判読ができることもありますが、全く判読できない文字もあります。その代表例の文字として、「年」「春」があります。この文字の篆書は、対応する楷書が、私たちが知っている楷書とは違っています。
「年」の文字は、上にノギヘン、下に数字の千、です。この文字の楷書を篆書にしているので、「年」とは全く判読できません。同じように「春」は、下記の画像に手書きでも書いたように、草冠(くさかんむり)の付く文字です。下部に「日」があるものの、「日」の上にある「屯」のために判読が難しくなります。
古代の中国から存在する 本来の篆書とは別に、日本の印章業界(はんこ屋の組合組織)で考案された書体に、「印章新体」があります。この文字は対応する楷書が日常使いの楷書なので、篆書風になっても判読ができます。(下記の画像で楷書の上に表示されている文字です)
店頭での接客時には、このような文字をいただいた場合、本来の篆書で作るか?または印章新体を採用するか? 辞書を開いてご覧いただき、ご希望を伺っています。ネットのご注文の場合、彫る前に一度、印稿(仕上がりのラフデザイン)をメールでお送りして、文字を確認いただいています。お客様にとって、仕上がり時にご納得、ご満足の行くことが大切と思っております。