東京 八王子 印鑑文字工房 楽善堂の店長が印鑑や文字の魅力を語る
印鑑の楽善堂 四代目店長 平澤 東のブログ

小さな裁判になった文字の違い

2023年07月28日

印鑑 八王子 楽善堂

──── 八王子で印鑑を作り続けて124年 ────

 こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。

 印鑑に多く使用される書体は、篆書(てんしょ)です。この篆書は中国で秦(しん)の時代からある文字なので、現代に生きる我々には、理解しがたいこともままあります。その中の一つに、「咲」と「笑」の文字が篆書では同じ文字になることです。

 40年以上も前のことになりますが、印鑑彫刻の講習会に通っていた頃、講師の先生が「咲」と「笑」の文字の話をしてくれました。あるはんこ屋さんで起きたことで、お客様は「咲子」の印鑑をご注文して、はんこ屋の店主は「笑子」の篆書で彫り上げました。はんこ屋の職人同士ならば、当たり前のことで通用しますが、このお客様は、「文字が違うから作り直して欲しい。」と言ったそうです。しかし、はんこ屋の店主は、がんこ職人ですから、一歩も譲らない、結果、お客様が民事で訴訟を起こした、という話を聞きました。結果までは先生はお話なさいませんでした。

 店を持って営業をしているからには、お客様の立場、お気持ちを汲み取るべき、が私の考えです。受注時に、本来の文字「笑」の篆書を使ってよいですか?または、印章新体、と言って、中国でなく日本で作られた新しいタイプの篆書もありますが、どちらがお好みですか? これが商人としての正しい接客と思います。 この「咲」の文字にかかわらず、篆書が明らかに普段見慣れている楷書とかけ離れる場合、私の店では、事前の相談、打ち合わせを必ずしております。

「咲」と「笑」の文字、楷書、行書、草書では違いますが、ひとたび、篆書(小篆・印篆)になると、「咲」が「笑」になってしまいます。『常用漢字印章字林』より抜粋

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