東京 八王子 印鑑文字工房 楽善堂の店長が印鑑や文字の魅力を語る
印鑑の楽善堂 四代目店長 平澤 東のブログ

18文字の割印(わりいん)を彫る

2022年09月10日

印鑑 八王子 楽善堂

──── 八王子で印鑑を作り続けて124年 ────

 こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。

 先日、中に18文字が入る割印(わりいん)を彫りました。割印は縦長で陸上トラックのような形状をしています(下記の印影を参照下さい)。受注頻度は少なく、当店では1年に一度くらいです。会社設立時に必要な二重丸の法人登記印、付随して正方形の角印(かくいん)は、月に数本は受注があります。

 今回の割印は文字数が多くて、4本受注の中で、最高は18文字ありました。正方形の角印で18文字は、縦の列を4行に分けておいて、1行に4文字、または5文字を配置すれば、文字を収めることが可能です。ところが、割印は縦に2列の文字割なので、18文字ならば、例えば、右列に8文字、左列の10文字を割り振ります。今回はこの10文字に苦労しました。横線の画数が多い漢字が揃っていました。書体は篆書(てんしょ)なので、辞書を見て、極力画数の少ない文字を選びました。ここが篆書の便利なところです。印鑑は「いかに楽に見せるか」が大切で、文字数が多い場合に画数が少なければ、文字の行間も楽になり、見た目がすっきりで、長年使ってきて、朱肉の目詰まりが来ません。

 篆刻三法(てんこくさんぽう)に、字法、章法、刀法、とあり、字法はどの文字を選ぶか?を考えます。章法は印(いん)の中で、1つの文字がどれくらいの面積を占めればよいか?を考えます。今回の仕事は、字法、章法、について十分考える機会を与えられました。刀法については、仕事前に、仕上げ刀を研ぎました。さらに切れ味のある仕上刀で仕事に臨みました。ちなみに、私の師匠の教えでは刀法に関しては「百錬自得」の四文字だけです。

右の割印は、右列に「多摩開發興行」、左列は「株式会社割印」です。
文末は「割印」または「契印」と入れることが多いです。割る、の文字通り、
2枚の契約書の上と下にまたがせて押捺します。

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